今季最悪の出来でも抑えるすごみ
またすごみを見た。パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)第2ステージが13日に開幕し、エースのダルビッシュ有投手が完投勝利をマークした。本人も振り返ったように「今季最悪の出来」だった。それでも5安打2失点と先発の役割は果たし、きっちり勝ちはものにした。
プレーボール直後にいきなり152キロを投げ込み、初回から全力投球に見えたが、110球を超えた8回にも150キロを計時。それでも「打ち損じも多かったし、たまたまいいところに投げられた」。試合後、まるでKO降板した投手のようなコメントもあったが、紛れもない初戦勝利の立役者だった。
悪いなりに133球を投げ切り、完投勝ちできる秘訣(ひけつ)は何か。もちろん、本来持っている球の威力、キレが抜群で、少しくらい悪くても並みの投手以上の力があるのは確かだろう。さらに、ダルビッシュという名前で相手打者に苦手意識があるのかもしれない。13日の試合後、鶴岡捕手が、その“答え”の一部を教えてくれた気がした。
今季、ダルビッシュのほとんどの登板試合でマスクをかぶってきた女房役も、13日の内容は「今年一番悪かった。球も走っていないし、コントロールも自分でできていなかった」と振り返った。その中で「なぜ抑えられたのか」の問いに「球種が多いピッチャーなので1つや2つは使える球が必ずある」と説明した。
その日は1つだけ頼れるものがあったという。打者の手元で微妙に変化する直球系のツーシームだ。ダルビッシュの場合はややシュートする球で、特に右打者が苦手にすることが多い。ツーシーム以外にも直球、カーブ、スライダー、フォーク、カットボール、チェンジアップを使いこなし、シンカー、ナックルも持ち合わせる。今季のダルビッシュといえば剛速球のイメージもあるが、多彩な変化球は本来の持ち味だ。
速球を連発しながら、その時の調子、状態に応じて、変幻自在のキャラを演出できる強みがある。球種だけでなく、あるインタビューでは「4つ5つのフォームがあって、そこからいいものを見つける」と話していた。シーズン200イニング以上投げながら、大崩れすることなく、驚異の防御率1点台をキープできる理由だろう。球速以上に“カメレオン投法”にすごみを感じる右腕だ。
(07年10月15日付、北海道HP「ハム番日記」村上秀明)