日本ハム中田を評論家3人が徹底分析

- オープンスタンスの構えからスイングする中田のフリー打撃(撮影・黒川智章)
球界の話題を独占する日本ハム高校生ドラフト1巡目の注目ルーキー中田翔内野手(18)は、シーズンでどのような活躍を見せてくれるのか。魅力は? そして欠点は? 日刊スポーツ評論家の山下大輔氏(55)西本聖氏(51)佐々木主浩氏(39)が、7日の紅白戦を観戦。それぞれの視点で、中田を分析した。(構成・飯島智則)
山下は7日の紅白戦を観戦した後、フリー打撃で撮影した分解写真を見た。「部分、部分で止まっている写真で大きな欠点はない。非常に力強さのあるフォーム」と好評だ。しかし、言葉が後に続いた。
山下「しかし相手投手は、このスイングを崩そうとして投げてくる。そこを含めた一連の動きの中で、どうタイミングを取るかとなれば、ちょっと時間がかかるかなという印象はある」
山下は昨年まで楽天の編成本部長を務め、高校時代の中田もよく見ている。
山下「すごく魅力のある選手だよね。バットを振るスピード、そして飛距離。野球界を支えていく存在といっていい。だけど、まだ原石。土も泥もついているままの原石。きっとダイヤモンドが出てくるだろうけど、これから削っていく作業が必要でしょう」
西本、佐々木とも「素晴らしい18歳」と評した上で、現状を分析した。これからの中田のために。
中田が構えると、オープンスタンスに目がいく。中田の特徴といってもいい。
佐々木「投手の視点からみると、非常に投げやすい打撃フォームをしている。打席でのオープンスタンスを見た瞬間、投手の直感で『内角が弱いんだろうな』『内角に投げられたくないんだろうな』と感じた」
内角の意識が、中田の打撃を狂わせる。7日の紅白戦での第4打席。投手の星野は、初球を内角速球で空振りを奪うと、2球目は外角への速球を投じた。それほど厳しいコースではなかったが、中田は見逃した。
佐々木「こうやって追い込んだら、もうストライクはいらない。3球目からは外角へ2球続けて変化球を投げて空振り三振を奪った。中田はフリー打撃では味わえない、プロのレベルを実感したことだろう」
山下「内角の速い球に対する意識が強すぎるから、体の開きが早くなる。だから外の球に手が出ない」
西本は紅白戦の後で中田に話しかけた。
西本「本人に『内角を意識した構えなのか』と聞いたら『高校1年のときのフォームに戻しました』と答えてくれた。彼なりに工夫しているんだね。でも、現状では内角球がさばけず、外角に落とされたらまずついていけない。タメをとることができずに、タイミングが合わない」
期待のルーキーには厳しい評が続く。では、どうするべきか。
山下は「中田は逆方向へ打てるかな。今の打ち方では打てないのではないかな」と指摘した。
実際、中田は「最終的には広角に打てるようになりたいけど、今は思い切って引っ張っていきたい」といった趣旨の言葉を口にしたことがある。最大の魅力である飛距離をアピールしたいという思いが強いのだろう。山下は「そこがポイントかもしれない」という。
逆方向へ打てない理由。山下は「構えではない。構えはどんなでもいいと思う。実際、落合(中日監督)はオープンスタンスでも逆方向へ打てた」と言う。
山下「中田の場合、投手にバットのグリップが見えるタイミングが早い。インパクトまで距離が取れない。落合はギリギリまでバットが出てこない。そこが違う」
佐々木「落合さんの場合、投手と正対することで逆に投手に重圧をかけていた。『内角でも外角でもどうぞ』という雰囲気で、実際に打った。まあ、18歳で落合さんと比べること自体、彼への期待が非常に大きいということだよ」
中田の魅力が、飛距離にあるところは間違いない。しかし、山下はパワーヒッターこそ逆方向へ打つ打撃を練習すべきと述べた。
山下「米国へ行ったとき、ヤンキースの打撃コーチに伝わる指導法として『パワーヒッターには逆方向へ打たせろ』というマニュアルがあると聞いた。これは非常に有効だと思う。インパクトまでの距離を十分取れ、強い打球を打つための基本になるからだ。バリー・ボンズも調整の一環で、1週間から10日の単位で絶対に引っ張らない時期があるという。その時期の実戦では、右方向へ進塁打すら打ちたくないから、走者がいるとバントすることもあるそうだ。パワーヒッターの成長過程で、そういった練習も必要なのではないか」
一見して気が付く欠点。指導者はどう対処しているのだろうか。西本は「18歳の彼が、彼なりに工夫している。その工夫が間違った方向へいってはもったいない」と言って、コーチの元を訪れた。
日本ハム中島打撃コーチ「(欠点は)十分わかります。今は何も言わないで見ている状態。本人も、このままじゃ打てないと分かってきた。こちらの言葉で中途半端に変えるより、本人が肌で感じ取ってほしい」
西本「それも1つの指導方法だとは思う。当分は今のまま見ていくようだが、いつアドバイスして変えていくのか、それがポイントになるだろう。さらに変えていくとすれば、チームとして彼をどう育てるのかという方針ともかかわってくる。1軍で使いながら育てるのか。2、3年ファームにおいて、じっくりと鍛えるかでも、彼の将来は変わってくる。体も、もっと絞った方がいいだろうしね」
山下には危惧(きぐ)がある。現状のまま実戦を続けていけば、そう簡単に結果は出ないとみている。結果はいい。中田に起きる変化を心配する。
山下「恐らく今のままでは『内角に詰まる』『変化球に当たらない』という状況に陥る可能性はある。そんなとき、バットに当てようと打撃を小さくしてほしくない。でも、そういうことじゃない。日本を代表する長距離砲になる素質があるわけだし、大きく大きく育っていってほしい。周囲もだけど、まずは本人がそういう意識を持ってほしいね」
佐々木「高卒ルーキーに欠点があるのは当たり前。でも、18歳として規格外の能力を持っていることは間違いない。フリー打撃で周囲の度肝を抜いた飛距離も天性のものでしょう。結果が出なくても変に縮こまらず、1つ1つ課題をクリアしながら大きく伸び伸びと育ってほしい」
右の長距離砲として期待される高卒ルーキー。どうしても周囲は、清原が新人で残した31本塁打と同等の期待を寄せてしまう。即戦力として1年目からの結果を期待してしまう。しかし山下は「清原は18歳のころから、プロで10年4番を張ったような打撃をしていた。内角攻めがきつくても、そこに反応して開くこともなかった」という。清原は1年目からダイヤモンドが見えていた。中田はまだ原石のまま。しかし、ダイヤが出てくる素材という見方は一致している。何も清原と同じような数字を残し、同じように歩んでいく必要はない。中田には、中田の道がある。
打撃も、言動も、表情も魅力たっぷりの中田。将来的に大きく育ち、プロ野球を支える打者になってくれるだろう。それまで、少しばかり気を長く、その日を楽しみにしていればいいのかもしれない。(敬称略)
[2008年2月9日 紙面から]
