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日本ハム新庄が試合前に地上50Mから着地

日本ハム新庄の宙づりサプライズ登場を見守るファン(撮影・栗木一考)
日本ハム新庄の宙づりサプライズ登場を見守るファン(撮影・栗木一考)

<日本ハム3-0阪神>◇6日◇札幌ドーム

 初めて降ってきたのは、新庄だった。日本ハム新庄剛志外野手(34=SHINJO)が4万3473人観衆を集めた今季2度目の札幌ドーム超満員作戦の日に、試合前に仰天パフォーマンスを演じた。

 人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号のような「快挙」が実現した。雨、雪を…、すべての落下物を防いできた札幌ドームのグラウンド。試合開始10分前、照明が消える。中堅の守備位置のほぼ真上、天井に設置されたスピーカー前部の穴から突如、キラキラと回転するミラーボールが飛び出してきた。

 ノリノリの音楽がかかる。ソウル界の大御所、アース・ウインド&ファイアーの名曲「レッツ・グルーヴ」。これが“新庄ナイト・フィーバー”の始まりだ。ミラーボールが少しずつ落下してくると、その上にある小さなゴンドラの上に立っていた。こわばった表情で直立不動。20階建てビル相当の地上50メートルからポーズを決めながら着地すると、両手を地面につきへたり込んだ。

 実は根っからの高所恐怖庄。試合前、チームメートに「リハーサルをやるとビビるかもしれない」と打ち明けたほど。歌手・松任谷由実らの舞台で何度も試みてきたプロ集団の協力を得て、仕掛けた本番一発勝負だった。この日は自ら発案した満員化計画の、開幕戦に続く今季2度目の指定試合。右翼席には古巣阪神ファンがぎっしり。試合前練習後には「みんなが見ていたら、やらなければいけない」と恐怖心を克服した。

 新庄も、人の子…。札幌ドームの“屋根裏”では「たけぇー」と絶叫して1度はおじけづいた。だが観衆実数発表以後、札幌ドーム最多の4万3473人のために勇気を振り絞る。右腕でワイヤを抱え込み、左手でその“命綱”をしっかりつかみ固定。カミナリを怖がる子どものように、右手のひらをおへそに当てて降下をスタートし無事、フィニッシュした。

 ヒルマン監督は勝因の1つに挙げた。「新庄で、みんなが興奮して野球ができた」。初回の第1打席。遊撃へボテボテのゴロを放ったが震えた余韻が残る足で走った。2点目の適時安打で連敗ストップを後押しした。パフォーマンス後、「君が代」が流れているその時。脱帽して胸に当てていた右手を一瞬、動かして口元に持っていった。帽子にそっとフレンチキスした。今季で別れを告げる、愛着のある両チームのファンと札幌ドームのために-。新庄はあるはずがない、一夜限りの「空」を創った。【高山通史】

 ◇新庄が「空を飛ぶ」まで

 ◆きっかけ 今季の開幕前のオープン戦などで、ファンら一般を対象に「サプライズ! SHINJO」と銘打ち、希望パフォーマンスのアンケートを実施。総数2007件を、新庄がチェック。新庄の要望と合致した、365件あった「空を飛ぶ」という内容のものを採用した。札幌ドームの設計図を見て方法を検討。当初はマウンド上部にあるスピーカー部分からの降下を考えていたが「そのまま守備位置に就きたい」などの要望から、中堅上部に決定した。無理だった場合、花火を打ち上げるプランが第2候補。

 ◆実行まで 設営業者は、歌手の松任谷由実や浜崎あゆみらの舞台装置を手掛けた経験があるプロ集団の「アトリエカオス」。前日5日午前に台座35センチ四方で、背もたれは1・5メートル、ワイヤの直径5ミリのゴンドラを設営。フックの部分は1・8トンの重さに耐えることができるレスキュー隊用を使用し設営完了。

 ◆この日 新庄が天井へのぼるためには観客がいる3階通路を移動しなければならない。そのため新庄は目隠しされた黒い箱に隠れ、右翼ファウルグラウンド上部にある天井へとのぼれる階段まで移動した。当初は、札幌ドームの作業員用の制服を着用しバレないようにするプランもあった。天井を約400メートル、徒歩で約5分かけて歩き、中堅上部のスピーカーまで到達し、パフォーマンスを決行した。

[2006年6月7日8時52分 紙面から]

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