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日本ハム小谷野が病魔克服の快気祝砲

- 本塁打を放った日本ハム小谷野は笑顔で生還(撮影・山口貢)
<ロッテ2-8日本ハム>◇3日◇千葉マリン
日本ハムが、小谷野栄一外野手(26)の1発でロッテを粉砕した。2点リードの3回。ロッテ久保から左翼席へ今季1号2ランを放った。試合を決定づける豪快弾を含め2安打3打点。今季2度目の先発全員安打での快勝を導いた。昨季は精神疾患の「パニック障害」を患い、シーズンを棒に振り、野球生命のピンチに立たされたがカムバック。病魔に打ち勝った若きスラッガーの復活アーチが、上位追撃への号砲になる。
たった1本のホームランには、自分にしか分からないドラマが詰まっていた。小谷野の闘いが終わった。3回2死一塁。久保の直球だった。フルスイング。177センチと小柄だが、元気になった体全体のパワーを乗せ、強い気持ちを打球に宿した。左翼スタンドへ放物線を描き、突き刺した。慣れないヒーローインタビューが終わった直後、駆り出してくれた広報に言った。「こういうの、苦手だって言ったじゃん!」。天真らんまんな笑顔が病気に勝った証しだった。
半年前。素直に笑うこともできなかった。昨夏。極度の不安感などが襲うことが原因で発作などの症状を起こす精神疾患の「パニック障害」に突如、かかった。昨年6月に2軍に降格した直後だった。2軍戦の出場、練習参加などを球団の配慮もあって制限された。食事をしても嘔吐(おうと)の連続。服用薬の副作用もあり、寝付けない毎日も過ごした。伸び盛り、右の大砲候補と期待されていた4年目、選手生命のピンチだった。
過度の寝酒で無理をして床に就いたこともあった。当時は「いつ治るか分からないけれど、向き合うしかないんです」。言葉は前向きだったが、自暴自棄になりかけた時も、あった。トレーナーら周囲のチーム関係者も、精神的な負担を掛けないよう気遣った。荒れた生活を知っていてもそっと見守るしかなかった。たった1人で克服するしかない、孤独な闘いだった。
回復の兆しが見えたのは、シーズン終了後。少しずつ兆候がなくなり、通常練習に復帰した。いつ襲ってくるか分からない病魔の不安を抱えながら、再出発した5年目。春季キャンプは1軍スタートでも、開幕直前の3月中旬に2軍へ降格した。「体に負担が掛からないように」とオーバーウエート気味の体を絞った。キャンプ中から大好きな酒を断った。最初の1週間は絶食をし、午後7時以降に口に入れるのは水だけ。約12キロのダイエットに成功した。4月中旬に1軍昇格。すべての面で自分と向き合える強さを身につけ、グラウンドに帰ってきた。
前夜に完封負けした最悪ムードのチームを一振りで救った。05年8月以来の2年ぶり、プロ4本目のアーチ。試合に出られることが「やっぱり楽しい。うれしかった」と、9回には左前適時打も放ち2安打3打点と大暴れした。「僕のことを知って、同じ病気の人を勇気づけられたりしたらいいと思う。自分の周りの人に助けてもらったから」。たった1本のホームランには、多くの人たちへ届けたいドラマも、ぎっしり詰まっていた。【高山通史】
◆パニック障害 強い不安感を主な症状とする精神疾患の1つ。以前は不安神経症と呼ばれていた。理由のない不安とそれが原因で起こる身体的症状からなるパニック発作が中心症状。目まい、どうき、手足のしびれ、吐き気などの発作症状が突然発症し、多くの場合、数分から数十分持続して自然に消失する。治療は、薬物療法と精神療法がある。
[2007年5月4日9時47分 紙面から]
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