日本ハム優勝特集
日本ハム八木が新人初のパPO完封勝ち
グラブをたたき雄たけびをあげる日本ハム八木(撮影・黒川智章)
<プレーオフ第2ステージ:日本ハム1-0ソフトバンク>◇12日◇札幌ドーム
日本ハムのルーキー八木智哉投手(22)が、大一番で完封し胴上げ投手となった。わずか3安打、三塁さえ踏ませずソフトバンクのエース斉藤和に投げ勝った。前日はダルビッシュが1失点完投勝利。日本ハムは自慢の救援陣を投入することなく、プロ1、2年生2人だけで強打線を抑え込み、第2ステージを制した。
投手4冠の相手エースとの投げ合いに、ルーキーが1歩も引かなかった。八木の執念がサヨナラ勝ちを引き寄せた。劇的勝利の輪の中で、張りつめた表情から、目とまゆ毛が大きく下がる独特の人懐こい笑顔に変わった。「ファンの声援が背中を押してくれた。そのことをプレーで伝えたかった」。感謝の気持ちで、ファンに大きく手を振った。
「1年目。自分は挑戦者」。心に決めた通り、重圧もはねのけ、攻めた。許したのはたった3安打。試合を左右するポイントは3回1死二塁。ソフトバンクに先制の流れが傾きかけたその時、絶妙のけん制球でピシャリ、二塁走者の仲沢を刺した。新庄がセンターで手をたたいて喜んだ。流れは渡さない。新人とは思えぬ落ち着きで、ソフトバンクの勢いはそがれた。監督批判をしたエース金村不在の中で、第1戦完投勝ちのダルビッシュとともに若き2人がチームを頂点に導いた。
前日の11日、ベンチで1人、ファンが詰め掛けたスタンドを見つめていた。「ここまでこれた。日本ハムに来て良かった」。そうひと言つぶやいた。
希望枠で入団した。日本ハムと横浜が候補に挙がった。横浜出身だけに地元チームに心が動いた。その時、冷静なもう1人の八木が「世代交代を進めている日本ハムに行くことでチャンスが早めに来る」ことを考えた。選択は正解だった。
モットーにしている言葉がある。「心で勝て。次に技で勝て。ゆえに練習は実戦。実戦は練習」。母校の創価大野球部の指針でもあった。どん欲だ。7月30日のソフトバンク戦で9勝目を挙げたがその後、1カ月勝ち星から遠ざかった。ダルビッシュら後輩だけではなく、サラリーマンの先輩にも「自分のどこが悪いか教えてほしい」と聞いて、自分を見つめ直した。
優勝をかけたこの日、テーマ曲もヒップホップグループの「大我あざなタイプライター」の「強者の詩」に変更した。「強きものは、おのれに負けない」という一節がある。1度聞き、耳から離れず、99年発売だったものを探し続けて手に入れたものだ。
プレーオフの初登板初完封は八木が初めて。チームトップタイの12勝。パ・リーグの新人王もほぼ手中に収めた。ビールかけで先輩選手の「標的」になった八木が、新人の顔になった。「こんなに今年、勝てるとは思わなかった」と、あの人懐こい笑顔で素直に振り返った。【上野耕太郎】
▼プレーオフ初登板のルーキー八木が完封勝ち。前後期優勝チームが対戦した73~82年を含めてパ・リーグのプレーオフで新人投手の完封は初めて。プレーオフの初登板初完封は新人以外でも過去におらず、八木が初めてになる。日本シリーズでは過去11人が初登板初完封を記録しており、そのうち新人は00年<5>戦高橋尚(巨人)だけ。ポストシーズンで新人の初登板初完封は高橋尚に次いで2人目になった。
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