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縛られずユルく生きるもよし…

<連載・借りて見!シネマ「花よりもなほ」>

 近年は人情時代劇がちょいとしたブーム。中でも出色なのが、この1本だ。

 時は元禄15年、信州の若き田舎侍・青木宗左衛門がお江戸にやってきた。貧乏長屋に身を潜め、子供相手に寺子屋を営む彼の目的は、あだ討ち。親の敵を捜し出し、見事本懐を遂げるのが長男たる身の使命。ところがこの宗左、めっぽう剣の腕が…ない。

 しかも根っから気が優しく学問肌の彼は、あだ討ちそのものに疑いを持ち始め、さらに長屋の皆さんとの生活も心地よく、気になる夫を亡くした美人の女性もいるってな状況に陥っていく。

 ここまでくると見ているこっちも「宗左、おまえを死なせたくないぞ!」な気分。やがて彼と仲間たちがとった行動は…、やったね宗左、くーっ、うれしいぜ! の涙モンの大団円。

 物語も面白いうえに、登場人物の個性がどれも効いていて、いろんなヤツに泣かされたり笑わされたりする。さらに「長屋の共同便所の×××を肥料に売って、その金で正月のモチを買う」など、実際に行われていた習慣もコミカルに取り込まれている。このエピソードでは、キム兄こと木村祐一がすんげえイイ。

 「誰も知らない」ほか、ドキュメンタリー手法で人間を描いてきた是枝監督が、弱き者たちの視点から江戸時代とあだ討ちを描いた。「何かに縛られて生きるより、こんなふうでもいいんだよね」と思わせてくれる、ゆるく優しい時代劇だ。主演・岡田准一のまなざしの演技力にホレた。(S)。

 ◆「花よりもなほ」監督・是枝裕和/主演・岡田准一、宮沢りえ/127分/松竹、バンダイビジュアル/DVD3990円。

[2007年4月21日10時9分 紙面から]

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