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“普通の人”が音楽事典「音魂大全」出版

音魂大全の著者、鈴木創さん
音魂大全の著者、鈴木創さん

 一般大衆に広く受け入れられるような飛び抜けた個性や才能はない“普通の人”にも、自分の世界を提示する場を与えてくれる-。インターネットの普及は、そんな可能性をもたらしてくれた。小樽で洋品店を営む鈴木創さん(47)も、そんな1人。音楽好きが高じて00年に立ち上げたホームページが縁で、音楽事典「音魂大全」の出版、ラジオ局パーソナリティーに挑戦など、趣味の枠を越えた「もう1つの人生」を楽しんでいる。

 40歳を過ぎてから、人生がこんなに忙しく、楽しくなるなんて思ってもいなかった。鈴木さんの胸中には、きっとそんな思いがあるはずだ。

 そもそもは趣味に過ぎなかった。幼少期から店舗兼自宅に洋楽が流れていたこともあり、年を重ねても音楽は身近な存在であり続けた。ジョン・レノン、アメリカ、ニール・ヤング…。中学1年で初めて買ったレコード、20代、30代の世代を映すCD…、数えてみれば3000枚を越えていた。「少し整理してみるか」。94年から音源を聞き直し、97年からは手書きのカルテとして書き残し始めた。ジャンル別、年別、国別…、やればやるほど終わりはなかった。

 00年にホームページ「ロック世代のポピュラー音楽史」(注1)を立ち上げると、作業量は更に加速していく。「文章は昼間お店で書いて、仕事を終えた夜パソコンに打ち込み作業」。年ごとの代表曲をまとめると、もれた人を取り上げるコーナーもほしくなる。家業を継ぐまで自動車メーカーで設計を担当していたという「理科系の血がさせる」のか、気づけば膨大な情報量を抱えるサイトになっていた。

 「ロック世代-」が音楽ファンの口コミならぬ“ネットコミ”で広がっていくと、予期せぬ反応が起きてきた。1番驚かされたのが、洋泉社(東京)から届いた出版の誘いだった。

 「(ロック世代-の)膨大な量にまずビックリ。ホームページから本、ということはウチでは滅多にやっていないのですが、鈴木さんの、このHPの内容ならという思いがありました」。「音魂大全」(注2)を出版した洋泉社編集部の渡邉秀樹さんは振り返る。1950~99年の音楽史を1年ごとに切り取り、アーティスト225人を紹介。683ページ、2940円という決して安くない本だが、昨年7月の出版以来、息の長いロングセラーになっている。

 出版の3カ月後にはFMおたる(注3)から週1回のパーソナリティーを要請された。「World Pop Cafe~世界一周音楽の旅~」(火曜午後3時15分ごろ)は、鈴木さん選曲による世界一周がテーマ。「本当は半年の企画だったんですが、なかなか終われなくて…」。日本を出発した旅は欧州を経て、やっと米国ニューオリンズにたどり着いたところだ。

 本家本元の「ロック世代-」は、今も1900~49年編へと増殖を続けている。「音楽を聞くより(資料の)本を読む時間が多くなってしまって」と苦笑いする鈴木さんだが、若いころからモットーが「人の倍生きて倍楽しむ」だけに不満はない。市井の音楽史家として、取材されることやコメントを求められることも増えているが、名刺には「有限会社 スズキ洋品店 代表取締役 鈴木創」とだけある。【阿部政信】

 【注1】http://www3.ocn.ne.jp/~zip2000/

 【注2】第1部クロニクル(年代記)、第2部アーティスト列伝の2部構成。主要書店で発売中。問い合わせは洋泉社=電話03・5259・0251へ。

 【注3】96年7月開局のコミュニティーFM局で社名はエフエム小樽放送局。76・3。

 ▼鈴木さんの本業である洋品店は「ZIP」「BENETTON」「POUR LA VIE」の3つのショップからなる。所在地は小樽市稲穂2-15-11、都通り商店街内。営業は午前10時30分~午後7時、定休日は第2、第3水曜日。

[2007年8月22日11時3分 紙面から]

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