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映画「壁男」撮影も編集も“北海道一色”

早川監督に迫る、壁男の手…!?
早川監督に迫る、壁男の手…!?

 人間でも妖怪でもない存在が壁の中に住み、じっと人間たちの生活を見つめている…。そんな都市伝説をモチーフにした映画「壁男」が、9月1日から北海道で先行公開される。実はこの作品、主演2人をのぞき、全員が北海道出身または在住者。撮影も全編が札幌で行われた。珍しい“メイド・イン・サッポロ”の映画について、早川渉監督に話を聞いた。

 壁男。壁の中に住み、ただじっと人間の営みを見つめている存在。時折、気配がする。しかし害はない。それでも、日々のささやかな秘密や内証の楽しみまで見つめられていると思えば、むずむずと不穏な気持ちにならずにはいられない…。

 諸星大二郎の同名短編漫画を大胆に脚色し、テレビというメディアが生み出し増幅させる「ウワサ」の不気味さを描いた映画「壁男」。早川監督が「いつか映画化を」と思い続けて実現した念願の作品だ。

 「ホラーと言うには、わっ! と驚かせる手法はとっていない。壁男が悪さをして退治する話にはしたくなかった。それより、勝手に壁男を解釈して勝手にテンパっていく人間を描きたかったんです」と早川監督は言う。

 じわじわと見る人を包み込む不安感。それがこの映画のコワさ。撮影をした真冬の札幌の寒そうな風景が、映像内に緊張感や閉塞(へいそく)感を生んでいるのもいい。が、明らかに札幌と分かる場面はなく、マチの名前も劇中では語られない。

 「映画の魅力は、観客を魔法にかけることです。気持ちよくファンタジーを楽しんでいるとき、ナマの現実が見えては一気にさめてしまう。だからあえて、場所も時代もボカしています」。わざとらしく観光名所を出し、北海道風味に頼ることはしない。あくまで作品自体の味わいで勝負、ということなのだ。

 「ローカル製作の映画はこの程度だよな、と言わせたくなかった」。そう語る監督のこだわりは撮影方法にも及び、通常の35ミリフィルム撮影ではなく、最先端の高性能デジタルHD撮影に挑戦した。CMや長編映画の撮影に導入されている技術だが、「プロから見て、これを生かしきっている作品はほとんどない」のだそう。本作は、その特性を生かした映像クオリティーの高さでも業界的な注目を集めることになった。

 「フィルムの現像は東京でしかできない。が、デジタルなら編集仕上げに至るまで札幌でできる。その意味では、初の100%道産(劇場用長編)映画です」と早川監督。「ただ、記録用の50キロもあるハードディスクを持ち歩く必要があり、特に氷点下での使用はメーカーも想定外。撮影は始終ヒヤヒヤでしたけどね」との裏話も、今だから笑って話すことができる。(ライター重田サキネ)

 ◆壁男 諸星大二郎のホラーマンガをオリジナリティー豊かに脚色。地方局の深夜番組リポーター響子のもとに、匿名の視聴者から「壁男」に関するハガキが届き、番組で紹介すると大反響に。ウワサはエスカレートし、人々の間に不思議な変化が起こり始める。中でも響子の恋人でカメラマンの仁科は、取りつかれたように壁男を追い求め…。札幌はシアターキノ(中央区南3西6南3条グランドビル2階)で9月1日公開。

 ◆早川渉(はやかわ・わたる) 1964年(昭和39)生まれ、名古屋出身。北大入学以来、札幌在住。大学映研で自主制作映画を始め、その後CMプロダクションでディレクターとして500本近いCMを監督する。97年、初の長編「7/25nana-ni-go」を製作。99年のカンヌ国際映画祭・国際批評家週間に正式出品されたほか、数々の国際映画祭でグランプリほかを受賞。現在はフリーの映像製作者および札幌国際大社会学部メディアコミュニケーション学科講師。

[2007年8月15日12時11分 紙面から]

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