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ポケモン“育ての親”がちびっ子へ愛言葉

10作目のポスターの前でピカチュウ人形を抱え笑みを浮かべる久保氏
10作目のポスターの前でピカチュウ人形を抱え笑みを浮かべる久保氏

 毎年恒例の夏映画「ポケットモンスター」シリーズが今年で10作目を迎えた。エグゼクティブプロデューサーとしてポケモンを世界的キャラクターに育てた小学館キャラクター事業センターの久保雅一センター長(48)は札幌出身。第1回劇場版から手がけ、節目の10作目「ディアルガvsパルキアvsダークライ」も大ヒット上映中だ。ポケモン“育ての親”久保氏が、映画を通してちびっ子に伝えたいメッセージについて聞いた。

 ピカチュウと歩む“夢仕掛け人”の10年目。節目の今作からは「助け合い」というメッセージが浮かび上がってくる。

 久保氏「今回のストーリーを通していえるのは、親の助けを借りずに、いかに子供たち同士で助け合い問題に立ち向かえるか。ポケモンの登場人物に“親”は出ません。仲間と協力し合って対処する大切さを映画から感じ取ってもらえればと思います」

 過去9作で3855万人に笑顔と感動を届けてきた「ピカチュウ・ザ・ムービー」。今作は新手法として映画館でしか手に入らないポケモンをゲーム機を通して配信するスタイルを導入した。子供たちの歓声は1オクターブ上がった。

 久保氏「映画館に新しい魅力を与えたいんです。今は簡単に情報が手に入る新しいメディアがたくさんあります。映画館で過ごす時間というのはほんのひととき。でも、そんな時代だからこそ、これからは家族がともに同じ時間を過ごせる場所が貴重になっていくと思います。子供に楽しい思い出をつくってあげられれば、将来の映画文化も残っていく。上映中にゲーム機を開けてしまう子も少しいたようですが、マナーを徹底していけば今後、定着していく手法だと思います」

 子供の感性、視点、心の動きには常に敏感。常に新しいものを創造し続けるための努力は怠らない。

 久保氏「休日にサッカー少年団のコーチを務めているのですが、どこで覚えたのか必要以上に「気を使う」子が多い。そうしないとクラスで生きていけないのかも…。例えばサッカーのチーム分けで、4人いるコーチの中から助っ人を選ぶ際、最初に年齢の高い私を取ろうとする。勝ちたければ若いコーチを最初に選べばいい。もっと素直に、単純に「勝とう」と思えばいいのにそうしない。自分たちの時代に比べ周りにストレスも多いし、窮屈な生活をしている。何でも「はいっ」って言う子供も少ない。モチベーションを上げるのは大変だと思いますね」

 夏休みが終わり小学校は新学期がスタート。親が心配する「いじめ問題」についても伝えたいことがある。

 久保氏「違う考え方を持つ相手を『許容できる心』を持ってほしい。今回の映画を、いろんな登場人物の立場から見てもらうのも良いかと思います。世の中にはさまざまな見方がある。サトシの気持ち、ピカチュウの気持ち、最初は分かりあえなかった「ダークライ」の気持ち。サッカー少年団でも、厳しい言い方をする子やおとなしい子もいる。ケンカにもなる。初めはなかなか相手を受け入れられないのだけれど、一連のやりとりが落ち着いてくるとチームが固まってくる。今、私が指導している小3、小4ぐらいの子供たちは一番複雑な年ごろ。だからこそ、ベクトルが1つに合ったときには、急激に力を発揮できる年齢層でもあるのかと思います」

 映画からより多くのものを感じ取り、成長に役立ててもらえたら-。子供たちと真摯(しんし)に向き合ってきたからこそ愛され続ける超人気映画。来年も再来年もその次の年も-。ピカチュウと久保氏が繰り出す愛の「10万ボルト」は、いつまでも斬新で刺激的で温かくあり続ける。【取材・構成 永野高輔】

 ◆久保雅一(くぼ・まさかず)1959年(昭和34)7月25日、札幌市生まれ。早大教育学部卒。83年小学館入社。コロコロコミック副編集長、キャラクター企画室長などを経て、98年から現職。「ミニ四駆」「ポケットモンスター」などの企画、プロデュースを手がける。ポケモンのゲーム、コミック、アニメ、キャラクター商品といったメディアミックスの仕掛け人で、98年公開の映画「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」からエグゼクティブプロデューサー。著書に畠山けんじとの共著「ポケモンストーリー」(日経BP社、角川文庫)。

[2007年9月5日13時44分 紙面から]

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